一名の悪魔がいた。
どこかで誰かを呼ぶ声が聞こえた。
暇を持て余していた彼はその声の方面へふらりと飛び立った。
声の出所は彼の住む世界とは違う世界の、小さな村であった。
村に住む”人間”がひと固まりになって祈っているようであった。
村の長か呪術師か、塊の先頭にいる男が何やらぶつぶつと唱えている。
男の前には二頭の雄山羊。
男の情報を探ってみれば、この村に続いている不幸を止めてほしいと神に対して祈っているようだ。
二頭の雄山羊はその神への生贄、一匹はヤハウェと呼ばれる神へ、もう一匹はアザゼルという神へ捧げるという。
祈りの言葉を終えると村人たちはヤハウェに捧げる雄山羊を殺し、アザゼルに捧げる雄山羊を村の外へと放った。
悪魔はヤハウェという名も、アザゼルという名も聞き覚えがあった。
ヤハウェとは天に座すあの男のことだろう。
アザゼルとははるか昔この地を拠点にしていた天使の名だ。
だが、今や彼は天界を追われ、その生死も不明………
悪魔は口角を釣り上げると、実体をまとい、雄山羊を捕まえた。
その角を掴み、村人たちの前へ共に戻る。
突然の来訪者に村人たちは動揺した。
「アザゼル様……?」
その問いかけに、さきほどと同じく口角を釣り上げ「いかにも。」と悪魔は答えた。
同時に村人たちの思い描く”アザゼル”へと姿を変える。
「この村の不幸、私が止めてやろう。諸君たちは私にのみ祈ればよろしい。」
その言葉を聞くやいなや、村人たちは一斉にひれ伏した。
その様子を見て悪魔……”アザゼル”は笑みを浮かべた。
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アザゼルさん。
アザゼルさん説は・堕天使と土着の荒野の神。
なのでうちでは①グリゴリ(天界から遣わされた天使団)→②人間にいろいろ教える→③堕天使として追討される→④その後神として崇められる→⑤ふらりと現れた悪魔がその名前をいただき、悪魔ないし神アザゼルとなる。
そんな設定。
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